2016.11.15 Tue. gingko lights

体調が悪い日だった。

そもそも、昨日の夜から体調が悪かった。友人の父に依頼された原稿をつくるのをやめにして、漢方薬と頓服のワイパックスを飲んでさっさと床についた。

ワイパックスは1錠飲むとだるさが残るので、いつもはうちに1本だけあるバターナイフで半分に割って飲んでいるのに、昨日の夜はそうする元気もなく、1錠まるまる飲んで眠った。明日はぜったいに休もうと思ったけれど、自分の担当の仕事や打ち合わせが3つも重なっている日だということに起きて気がついた。起きてすぐにお弁当を詰めて出ることができたので、本当に偉いと思う。

一晩お風呂に入らなくても、今日は頭が痒くてイライラしたりしなかった。冬になったのだと思う。

おばさんたちに話しかけられると心が乱れてなにもできなくなってしまうから、ここのところなるべく早く出勤するようにしている。少しはやく出勤すると、心が落ち着いてからおばさんたちを迎え撃つことができる。まだメールもみていないところに、怒涛のごとく天気や気温や食事や体調のどうでもいい話をされると、仕事より先にイライラしてしまって手がつかない。隣のおばさんは突然わけのわからない仕事をふってくるし、指示内容が話していて全く伝わってこないので疲れてしまう。だから早めに出勤して、メールをみて、急ぎではないけれど微妙にめんどくさくて早めに済ませたい細かい仕事をまっさきに片付けてお茶を入れてのんびりして、息を切らして汗を流しわざとらしくフゥフゥいって出勤するおばさんを迎え撃つ。つーか健康のために階段使うのはわかったけど、それならゆっくり階段昇って、息も整えられるようにもっとはやく来ればいいのに。始業時間過ぎてからお茶入れてお菓子食べて一息つき出すのでイライラしてしまう。時給換算したら、自分たちの1時間には1616円がかかっている。わけのわからない工程や雑談に1時間かけているところを見かけると、それには1616円分の価値があるのか?と思ってしまう。ここがコスト管理に厳しい小売店なら即日解雇やぞ。自分の思考回路は場合によってはブラック企業によく馴染むので気をつけなければならない。今日は慌てて家を出たので、始業5分前について少しバタバタしてしまった。

今日は仕事で源氏物語についての講義を聞いた。自分は講義形式で話をきいていると、すぐに寝てしまう。さいきんわかったのだけれど、座っていてすぐ寝てしまうパターンには、3つの傾向があるみたいだ。

①なにを話しているのか要領を得ない

②話をするひとがある特定のタイプの声質をしている

③なにをしていればいいかわからない(仕事中などなら、どうやればいいか、何から始めたらいいかわからない)

今回は②だった。こういう時に必死で起きようとすると、文字が歪んでいる幻覚や、文字に蛍光ペンが引かれている、色が付いている幻覚を見てしまう。今日は源氏物語の引用文の、漢字の部分にだけ鮮やかな水色の蛍光ペンがひかれていたり、文字がオレンジ色ににじんだりした。こんなに辛かったのはひさびさだった。薬が残っていたせいもあるかもしれない。

パソコンを触っているときに寝てしまうと、画面がわけのわからない動きをしたり、操作をしてもうまく動かなくなったりする。パソコンに関しては幻覚でないときもある(たぶん)。眠ってしまうのは恐ろしいし、どう思われているかわからなくていやなのだけれど、それでも意識がシャットダウンされてしまうときがある。どうにかならないものだろうか。

そのあとは即打ち合わせがあった。この仕事のチームは男性と、安心して話せる女性だけなので安心して話せて少し体調がましになった。それでも、その後の仕事は無理だったので帰してもらった。体調というより、ここの職場に存在していることがもう無理だった。生理のような辛さだけれど生理は来ていなかった。

家にいたら身体がどんどん冷えて凍えてしまった、そんなに室温は低くなかったのに。携帯電話にかぶりつきになってしまって、おじいちゃんはもうすぐ死んでしまうのにうちの母親は冷たい、ということばかり考えて泣いた。

これはもうだめだと思ってパソコンひとつ持って出てサイゼリヤに向かった。

携帯を持たずに歩くと、街の匂いや音や色がよくわかる。落ち葉の匂いは魚のいる水槽の匂いによく似ていて、区役所のたけのこの山のような形をした車止めは夜に黒々としていて不気味だった。黄色く紅葉したイチョウはアスファルトの上に散らばると、コントラストがくっきりしてその大小さまざまな葉があるのがきれいだった。昔の知り合いがつくっていた紅葉したイチョウの歌を思い出す。gingko lights, oh our dark street.去年、心が終わっていたころ、そういえばよく歩道橋の上からうちの前に生えている一本のイチョウに挨拶していた。そうすることで一日やり過ごせる気がしていた。わたしたちの暗い路に、イチョウが枝を広げ光を放っている。銀杏の実は臭いけど。

サイゼリヤの机の広さ・高さは作業をするのに最適だ。携帯を持たずにサイゼリヤにきたらめちゃめちゃ思考がすっきりしてきた。サイゼリヤの机と椅子が家に欲しい。本当に!