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2017.01.23 内臓丸焦げ

胃の中に真っ黒に焼けて煤けたものが詰まっていて吐き出せないような、そんな気分になった日だった。

久しぶりに隣の席の年長女性との噛み合わなさが炸裂した。もう帰ろうか、という時だった。噛み合わなさが炸裂するときのパターンは、だいたいいつも同じだ。年長女性の求めている答えを私が出さなかった時、突然それは炸裂する。

なにかの地雷を踏んだ瞬間、「カンッ」と、金属を噛んだような嫌な感触の言葉が返ってきて、「それはあなたの判断でそうしたんだ、ね!」といって大概始まる。わたしの示した見解や判断が「従来の(彼女の信じる)やり方」とは違う時、「彼女の思う正しさ」と違う時に生じる。だいたいマジでどうでもいい「やり方」についての反発なので、目的が達成されるなら過程はどうでもいいだろと思う。そんな風に思っているのが顔に出ているのか、そこから更にヒートアップする。マジでどうでもいいなあ、と思いながら聞いているのがたぶん顔に表れているから、この人とはずっと相性が悪い。

仕事は、速く正確であることが大事だとわたしは思っている。もっと言うと、正確さが優先されれば、速さはそれに伴ってくる。やり方のベースは引き継がれるべきだけれど、結果が正しく出ていれば、それはその仕事を担当する人それぞれのやりやすい方法を取るべきだ。

例えばの話、「会議の内容のメモを取る」という業務が仮にあるとして、アナログで取る方が早いひとも居ればキーボードで打った方が早いひともいるだろうし、聞きながら書くより録音して後で書き起こした方が会議に集中できて内容が正確になる人がいるならそれでもいいのに、「必ず同じノートに毎回同じ鉛筆で記録を取るというように決まっているけれど、特に理由もわからないし誰も読まないからどうでもいいよ」と言われるけれど、違うやり方をすると苦言を呈される、そういう体質がどうにも合わない。「同じノートに同じ鉛筆で書くことでデータの公正性を保っている」とか、理由があるのならまだしも、「太古の昔からそうなっている」みたいな問答ばかりで、それじゃあまるで神事だろうが、と、思う。神事の方がまだ由来がわかるくらいだ。

で、更にその会議の記録をシェアする前に上司までぐるっと回して、その際にわけのわからん指摘が入ったりするから最低だ。「ここの漢字表記はひらがなに」とか、内部資料なんだからどうでもいいじゃんみたいな、そういうことを思うとどうせ上司のやりたいような方向にもってゆかれるか、適当にハンコ押されるのだから真面目につくる気がなくなる。そりゃ真面目につくりたいけれどもつくったところで虚しい。眠くて上手く描けなくなってきた。

ハッキリ物事をたがいに伝えられる職場ならいいのに、変に気を使うというか、ハッキリものを言って議論をしようとすることを避ける空気があるのでストレスが溜まる。「それは変だと思う」と言ってくれれば、「それには理由があって」と意見をぶつけられるのに、「あなたの責任でそういう判断をしたんだ!じゃあ貴方がそう言うなら私はそれに従うね!」みたいな物言いをする。どうでもいいだろうが。ハッキリ言えやくそが。もう辞めるんだし次そういう事があったら斬り込んで行こうかな。

隣の部署に駆け込んで、そういう話を30分くらいして(仕事の邪魔をして)、残った作業も明日に丸投げして帰った。それでも、胃の中がムカムカして、黒々とした焼けたものが入っているみたいな感じだ。もう辞めると決まっているのに心底嫌になった。何のために仕事をしているのかわからない、何のためにこの作業をしているのかわからない、そんなことばかりで給料も上がらない、上司はモチベーションを上げるどころか下げてくる、大ボスはボトムアップで意見をだしてくれというけれど上司に遮られて届かない、内臓が腐った人間みたいな組織にいるから胃の中が真っ黒みたいな妄想に取り付かれているのかもしれない。

鉢植えの蘭についたつぼみがいよいよ重たく頭を垂れて咲こうとしている。実家の台所で油まみれになり、猫たちに齧られていた蘭だ。一人暮らしの部屋に鉢植えがほしくてこれをもらって、油がこびりついてギトギトになっていた葉を一つ一つ拭い、手入れして新しい鉢に植え替えたら、去年は花が1つ咲いた。自分の愛情が実ったようでとても嬉しかった。今年は9つも花芽をつけている。こういう日記を書いている間にもいつの間にか花開くんじゃないかというくらい、いよいよ咲きそうだ。

一度ボロボロになったあとにこうして復活したところになんとなく自己投影してしまう。結果はすぐに出るわけではないけれど、向き合えば、今年は去年より、来年は今年より良くなってゆく。

今の職場に来たことで良かったことはいくつかある。まともな職歴を得た事、相性の悪い親元を離れて一人暮らしができるようになったこと、それで自分の人生をようやく取り戻せた事、ビジネスメールが打てるようになった事、PCの書類作成程度の技能が身についた事、役所のシステムや理念を理解できるようになったこと、それから、引っ越した事で今の交際相手と親しくなれたこと。毎日のストレスは大きいけれど、どれも今後の人生をグッと底上げするようなことだ。

ストレスで死にそうだけれど、良かった事もある。これからも良くなってゆく。ひとつひとつ進んでいる。でも今日は胃の中が真っ黒だ。