バッドバイブス、塩の風呂

ライブハウスへ久しぶりに足を運んだ。
手伝いを頼まれたのでスタッフとして楽屋に顔を出すといきなり、長年悶着のあったバンドマンに「◯◯◯ちゃん!若さの『わ』の字もないね!!!」と声をかけられた。いちばん嫌な奴に最初に出くわして、いちばん嫌なタイプの声のかけられ方をした。ここで抵抗しても、どうせ声を荒げられたり小馬鹿にされたりするだけなので、ああそうですね、もうババアですからね〜と荷物を置いてその場を立ち去った。居たくない場所からは立ち去っていいのだ。俺は知ってるぞ。
わたしが嫌な気持ちになったのは、自分が「若くない(からもう価値がない)」と思っているからではない。
わたしはいま、人生でいちばん美しいと思う。本当は、見た目で言えば23ぐらいの頃がいちばん綺麗だったけれど、今の私は見た目も中身も美しくなった。
毎日、君は綺麗だし美しいし素晴らしいね、と言ってくれる人間と暮らしているのだからそう考えるのは当たり前だ。
わたしが嫌な気持ちになった理由は2つある。
1つは、7つも年上のひとがまだそんなことを言って、自分で自分の首を絞めていること。
もう1つは、その人間が、まだ(かつてのように)わたしをそんな風に粗雑に扱っても平気だと思っていること。
居るのは知っていた。さすがにもう、わたしに対して粗雑な振る舞いはしないだろう、と舐めていたのが仇になった。
思った通り、そのあとになって「でも前よりだいぶいいよね」というマウントをかけられて、ああ、こいつのこういうやり口、とうんざりしてなるべく近寄らないようにしてイベントを過ごした。
久々に見ることのできたいくつかのバンドは面白かった。
面白かったけども、やっぱり小さなライブハウスは少し居心地がわるい。さっきのひとと顔を合わせなかったとしても、だ。音もちょっと粗すぎた。
ひとあし早く帰らせてもらって、風呂を沸かしてバスソルトを入れた。バッドバイブスと肩こりを退けるには清めの塩が要る。
スピリチャルは全く信じていないけれど、悪い「気」みたいなものにアタる、つまり嫌な人にあったりムカついた時に、対処として「清め」という行為が規定されているならそれをとってみるのもいい。
自分が、「もう大丈夫だ」と思えるようになって、その気分から離れられるのだから。